虹色のキャンバスに白い虹を描こう


ただの慰めなどではないと、僕にだって感じられる声色だった。
ばかじゃないもん。やや幼い口調でそう言い切った清が、珍しく怒っている。


「そんなこと言うなら、絶交だからね。世界一優しい私のお兄ちゃんのこと、悪く言ったら許さないんだからね」

「清……」

「ごめんって言ってくれなきゃ許さないもん。自分でばかって言うお兄ちゃんがばかだよ」


結局俺、ばかじゃねーか。
思わずといった様子で口元を緩めた純が呟く。


「ごめん。兄ちゃんが悪かった」

「……うん、いいよ」


清は怒っているけれど、怒ってなんていなかった。酷く柔らかな表情で頷くから、きっとそうなのだと思う。


「お兄ちゃん、泣きすぎ」

「清、こういう時はあんまりふれずにそっとしとくもんだから」


額に右手を当てて唸る純が、しっしっ、と左手で僕らを追い払う。


「お前ら、上で話してこい。俺は今からここでティッシュの山をつくる」

「泣く気満々じゃん」

「うるせえ」


ず、と早速一枚ティッシュを引き抜いて鼻をかみだした純に、清と顔を見合わせる。


「……え、と……とりあえず、どうぞ」

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