虹色のキャンバスに白い虹を描こう
どうして清が謝っているのだろう。僕には関係ないと、一向に突き放されているような気がしてならない。
歯痒さを覚えながら、それでも自分に一体何ができるのかと問われれば、咄嗟に答えられる自信はなかった。
タイムマシーンを使って過去に戻り、彼女が傷つく前に事を収める。辛い記憶だけ消すことのできる薬を開発して、彼女の笑顔を取り戻す。
全部絵空事で、綺麗事だ。僕に彼女を守ることはできない。その事実だけが目の前に転がっている。
「本当に、気にしないで下さいね。前にこういうことがあって、その時の方がずっと苦しかったので。今回のは、大したことないんです。周りの人も助けてくれたし……」
「大したことないとか、言わないでくれる」
へらへらと話し続ける清を遮った。存外低い声が出て、思わず顔をしかめる。
「前の方が辛いから今は辛くないなんて、そんなのは勝手な言い分だ。辛さの程度で分類されるいじめはこの世に存在しない。君が辛いなら、それが尺度だ」
辛い時こそ笑え、とかいう人生の教訓は、踏みつけていい。笑って報われるのなら、今頃こうして苦しんでいる人は誰もいないだろう。
「許すな。君を馬鹿にした人間を、君だけは絶対に許すなよ。それは優しさだなんて言わないんだ」