虹色のキャンバスに白い虹を描こう
清が、ぎゅっと眉根を寄せる。
「……私、許さなくて、いいんですか?」
縋るような質問だった。それはきっと肯定しか求めていなくて、だから――否、そうでなくとも、僕の答えは一切変わらないだろう。
「うん。許さなくていい」
彼女の目を見て告げる。逸らさずに見つめる。
ぽろぽろと、透明な雫が清の頬を伝って流れていった。純と全く同じように喉の奥で少しだけ唸って、嗚咽が漏れる。
隠そうとも堪えようともせず、感情を剥き出しにして泣きじゃくる清に、安堵した。まだちゃんと、彼女の悲しみは生きている。
窓の向こうで雨が降っているのを眺めながら、清の泣き声を聞いていた。
僕にはそうすることしかできないのだ。慰め方も、励まし方も、よく分からない。
ふと窓枠から視線を移して、本棚の二段目に伏せられたまま置いてある写真立てに目を向けたのと、彼女が鼻をすすりながら泣き止んだのは同時だった。
「一番、仲の良かった子なんです」
僕の視線に気が付いたのだろう。清は唐突にそう言った。
「美術の授業で虹を描きました。テーマは空だったんですけど、私は虹が描きたくて。そうしたら、私の隣にいたその子が言ったんです」
――清の虹、おかしいよって。