虹色のキャンバスに白い虹を描こう


当時を思い出したのか、彼女の表情が陰る。


「虹が七色だっていうのは知ってました。でも私は、二色の虹しか見たことなくて……それ以外描きようがなかったんです」

「二色?」

「はい、黄色と青のグラデーションです。すごく綺麗に見えるんですよ」


そうか、と腑に落ちる。
虹は七色だというのが当たり前だし、実際に見かける回数が特別多いわけでもないから考えたことはなかったけれど、確かに僕もはっきりと虹を七色で見かけたことなんてないのかもしれない。

何となく上の方は赤っぽくて、下にいくにつれて青っぽい。固定概念と先入観によって補正された「七色」だ。
清の場合、赤が完全に見えないのだから、当然虹だってその影響を受ける。


「多分、怖かったんだと思います。見たことないものを隣で急に描きだして、その子からしたら、おかしい、どうかしてるって、感じたんじゃないかなって」


知らないということは、怖いことだ。分からないから遠ざける。排除しようとする。
誰だって最初はそうしてしまう。悪気なく、自分と違うものを攻撃して安心を得る。


「でも……それでも、私は友達でいたかった。分かり合えるって思ってました。……無理、だったんですけどね」

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