虹色のキャンバスに白い虹を描こう
まあ、言ったところでどれだけの人が信じるか分からないけれど。
僕の方が人望はある。むしろ彼女が言いふらしてくれた方が好都合だ。犬飼くんがそんなことをするわけない、という反応に転がるか――仮に彼女の言うことを信じたにしても、僕が「そうでもしないと彼女がしつこかった」と付け加えれば、大抵の人は納得するだろう。
「ええ……? 言いませんよ。わざわざそんなこと」
変なの、と彼女が呟く。
ちょうどその時、僕の頼んでいたものもテーブルに運ばれてきた。
苛々する。彼女は僕のことが好きじゃないのか? 僕がこういう人間だと知って、嫌になって離れていってはくれないのか?
鬱陶しい。相手の求めているものが分からないことも、場の主導権を握れないことも。
「おお……すごい食べっぷりですね。そんなにお腹空いてました?」
会話を放棄した。彼女の質問にも答えず、僕はひたすら食事に徹する。
その後も何度か話しかけられたものの、無視し続ける僕に途中で諦めたのか、彼女は黙って自分のパンケーキに向き合っていた。
「残念だったね」
お互いの皿が空っぽになった頃。
唐突に僕がそう零すと、彼女はアイスティーをストローで吸い上げながら、器用に小首を傾げる。
「僕がこんな人間で、失望したでしょ」