虹色のキャンバスに白い虹を描こう


学校を休むようになってから、両親にはずっと勧められていたのだという。無理に通う必要はない、転校や休学も視野に入れていいから、と。


「航先輩に連れて行ってもらった山で、改めて自然っていいなと思いました。あの日、私たちだけは学校のみんなと全然違う場所にいて、それでもいいって言ってくれる大人の人がいて。これでもいいんだって、このままでも大丈夫なんだって、思えたんです」


その時に決めました、と清が凛とした声で告げる。


「正直、学校に戻るのには勇気が足りなくて……逃げるみたいで嫌だなって思ったし、かなり迷ったんですけど。でも、ちゃんと自分で変わりたいって思いました。航先輩に頼ってばかりじゃなくて、私は、私の道を自分でつくらなきゃいけないと思いました」

「……頼ってばかりって」


僕はそこまで彼女に何かをしてあげられた覚えはない。過大評価だ。
それなのに、清は真っ直ぐな瞳で話す。


「前に色が分からなくなった時、航先輩の絵のおかげで見えるようになりました。それが今までの私の原動力で、全てだったんです。これからの私は、自分で自分の世界を取り戻すきっかけを見つけようと思います」

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