虹色のキャンバスに白い虹を描こう
迷いなど、ましてや揺らぎなど一切ない。彼女は既に決めたのだ。
柔らかさの中に強さを含んだ結論は、糧となって未来の彼女を必ず救うだろう。
「航先輩に会うと、決心が揺らいじゃいそうだったので。向こうに着いたら、ちゃんと言うつもりだったんですよ」
「それだと遅いでしょ」
「だって……!」
俯いた清が、だって、と小さく呟く。
「寂しいじゃないですか。航先輩の顔見て、ああやっぱり行きたくないなって、思っちゃうかもしれないじゃないですか。今だって思いそうです」
僕らの足元にあった水たまりに、波紋が広がる。彼女が俯いたのは涙を隠したいからだと気が付くのに、時間はかからなかった。
僕は、彼女の涙が見たいわけではない。慰め方も励まし方も分からないのだから。
笑っていて欲しいのだ。辛い時や悲しい時は不可抗力だけれど、せめて僕の前では、しょうもない「普通」や「当たり前」なんて気に留めず、笑っていて欲しい。それだけでいい。
「清」