虹色のキャンバスに白い虹を描こう
水たまりの上。力なく垂れ下がる彼女の手を、その小指を攫った。
「必ず会いに行く。いつか、君が自分で自分を取り戻したら、その時は会いに行くから、教えて欲しい」
自分の小指をそっと絡めて、窘めるように彼女の小指を軽く引っ張る。
「約束しよう」
清が顔を上げた。透明な雫が彼女の頬を濡らしている。
「本当に、来てくれますか?」
「うん」
「絶対に?」
「絶対に」
僕も負けじと真っ直ぐ彼女を見つめる。
更に潤んだ清の瞳から、涙が一滴零れ落ちた。その震える唇が、ゆっくりと弧を描く。
「私、航先輩に――」
瞬間、彼女の背後。雨が上がった空に、大きな虹が現れた。
すっかり晴れ渡った青を、アーチ状の透き通った「なないろ」がグラデーションを携えながら、濃く染め上げていく。
「あなたに、出会えて良かった」