虹色のキャンバスに白い虹を描こう
清が泣きながら、笑いながら、きらめいている。眩しくて、それでも優しい光だ。
綺麗だと思う。いつの間にか、くすんでいた僕の世界は、君を通して鮮やかに色付き始めた。
こんなにはっきりと虹が出ているのに僕には赤が見えないけれど、綺麗なことには変わりない。
大嫌いだった世界を、愛したいと思うよ。君がいる、この世界を。
「僕も、君に会えて良かった」
世界一綺麗だ。誰が何と言おうと、今ここで笑っている彼女が一番綺麗だ。
視界が滲む。目頭が熱くて、自分の頬に伝う温さに気が付いた時、僕は自分の目から涙が出ることを知った。綺麗で眩しくて涙が出ることなんて、知らなかった。
「航先輩、泣かないで下さい。私は、航先輩に笑っていて欲しいです」
自分もぐずぐずに泣きながら、清が懇願する。
今日はバスの時間があるから大人しく笑ってやるけれど、そんなのは僕だって同じだ、というのは悔しいから言わなかった。
清、僕は君が笑っていれば、それだけでもう何だっていい。
発車時刻のぎりぎりにようやく乗り込んだ彼女が、思い切り手を振るので、振り返す。
そのバスが見えなくなるのを待って踵を返すと、もうそこに虹はなかった。