虹色のキャンバスに白い虹を描こう
この主張は至極真っ当なはずだ。僕はもうそのコミュニティに属していない。
しかし彼女は先日のように「いーやーでーすー」と口を尖らせた。
「私は航先輩にみてもらいたいんですよ」
「どうして?」
「そんなの、当たり前です。一番すごいと思った人にアドバイスをもらいたいからに決まってるじゃないですか!」
駄目だ、先が思いやられる。
どうも彼女には理詰めが効かない。感情や衝動、直感でそのまま生きている印象を受けた。
「お願いします! 本当に、この通りです。絵が出来上がるまでの間でいいので!」
ぱん、と小気味いい音が鳴る。手を合わせて腰を折った彼女に、恐らくここ一ヶ月で一番大きいため息が漏れた。
「描き上がったらもう僕のとこには来ない?」
「えー……それはないと思いますけど、」
「ごめん。やっぱり他当たって」
「わわわ、嘘! 嘘です! 来ません、描くの終わったらもう!」
信用ならない。
僕が顔をしかめていると、彼女は更に言い募る。
「もし断られたら、いいって言ってくれるまで付きまといます」
「高卒の肩書はあった方が将来いいと思うよ」
「勝手に退学させないで下さいっ」