虹色のキャンバスに白い虹を描こう



彼女に連れられ、普段使っている電車とは違うものに乗り、ある駅で降りた。
同じ駅で降りた学生はちらほらいたものの、基本的に人の流れは少ない。うちの学校の制服も見当たらないし、知り合いに出くわす心配はなさそうだ。

改札を抜けて駅から離れれば、閑静な住宅街が広がっていた。


「航先ぱーい! 早く早く! こっちです!」


周囲を観察しながら歩いていたせいか、彼女との間に随分と距離ができていたようだ。僕を急かすその声に、渋々歩幅を大きくする。

更に進んでいくと、住宅街の中に木々が生い茂る場所があった。どうやら公園のようだ。


「ここは?」

「こないだ電車で寝過ごしちゃった時に、さっきの駅で降りたんです。せっかくだからちょっと探索してみようと思って歩いてたら、この公園を見つけました」


静かで集中できるんです、と話を結んだ彼女が、躊躇なく中へ入っていく。
以前「変わった人」という評価を目の前にいる相手から受けたけれど、彼女も彼女だ。普通、知らない駅で降りて探索しようだなんて思わないだろう。

しかし当の本人は既にポジション取りを終えたらしい。ベンチに腰を下ろし、自身の隣を叩いて僕を手招きした。

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