虹色のキャンバスに白い虹を描こう
彼女の言っていることは、あながち間違ってはいなかった。
もう今は彼女に対して「いい人」である必要も、好感度を上げる必要もない。そこに割くエネルギーが無駄だ。むしろ積極的に嫌われにいった方がいいのではないかとすら思っている。
「……いいから早く片付けてよ。アイス奢ってくれるんでしょ」
「アイス確定ですか!?」
私も食べたいからいいですけど、となぜか少し嬉しそうな彼女の様子は、理解に苦しむ。堂々とたかられているのに何とも思わないんだろうか。
ベンチから立ち上がって先に歩いていると、荷物をまとめ終わった彼女が後から横に並んできた。
行きとは逆で、僕が先行する形になっている。歩幅を合わせてやるつもりはないし、隣同士で歩く必要性もない。けれども彼女はやや大股で歩を進めながら、僕の横にいることだけは譲らないようだった。
「フォーエバーアイスでいいですか?」
「何それ」
「最近新しくできたアイスの専門店ですよ!」
彼女曰く、いま女子高生に人気のスポット、ということだった。こちらとしては別にその情報は心底どうでもいいのだけれど、電車内で勝手に彼女がべらべらと喋るものだから、適当に聞き流しておいた。