虹色のキャンバスに白い虹を描こう
苦笑交じりにアイスを頬張り、彼女が眉尻を下げる。
柔らかいバニラが舌の温度で溶けた。鼻から抜ける匂いが甘ったるい。
比較的早く食べ終わったと思ったけれど、つと見れば彼女の方が先にカップを空にしていた。手持ち無沙汰なのか、それを指先で軽く叩いている。
鉛筆同様、彼女の手からカップを取り上げた。
一瞬驚いたようにこちらを見上げた彼女の喉から「え」と気の抜けた音が零れる。
二つのカップを重ねて近くのゴミ箱に投げ入れた。
「帰るよ」
「……あ、はい、ありがとうございます……」
呆けた返事だ。
駅に向かって歩き出した僕に、ちょこちょこと彼女がまた横をついてくる。
「航先輩って、優しかったんですね」
「は?」
「優しいついでに買い物付き合ってくれませんか? 服が欲しくて!」
こちらの話を聞く気があるのかないのか。
彼女はすぐ近くにあった店に寄ると、公園のベンチに誘った時のような気軽さで僕を呼んだ。
「私、センスが全然なくって。一人で選ぶと毎回駄目なんですよ」
だからといって僕を巻き込まないで欲しい。
店先に出ているトップスを吟味しながら唸る彼女に、文句の一つでも言ってやろうと口を開きかけた時、奥から店員がやって来た。