虹色のキャンバスに白い虹を描こう
「そちら、スタッフのおすすめなんですよ~。トレンドカラーですごく人気なんです」
「そうなんですか? 可愛いなあと思って見てました!」
「はい~。こちらのスカートもいかがですか? そのトップスと同じピスタチオカラーで……」
「わ、いいですね! 可愛い!」
完全に蚊帳の外で居心地が悪い。
何となく視線を逸らしていると、彼女が唐突に話しかけてきた。
「航先輩はどう思います? このスカート」
「……いいんじゃない」
「じゃあこれにします!」
ただただ店員のセールスに流されただけのような気もするけれど、彼女としては僕の同意を得たということが大事な指標だったらしい。即決だった。
今さっき店員が出してきたスカートのラックから、同じ色のものを一つ取って彼女に渡す。
「はい」
「え?」
一番手前にあったものより、奥にあったものの方が綺麗だろう。それだけのつもりだった。
そう、僕は間違えた。
「お客様……そちら色違いですけれど、よろしいですか?」
困惑した瞳が僕を映す。瞬間、自分でもはっきりと、そしてゆっくりと血の気が引いていくのが分かった。