虹色のキャンバスに白い虹を描こう



「最近あの子来ないよな。ほら、黒髪清楚系の」


授業の合間の休み時間に、ショータが突然こちらを向いた。
本当にいきなりで心臓に悪かったのと、あまり触れたくない話題だったのとが合わさり、僕は曖昧な返事しかできない。


「ああ……そうかもね」

「だってこないだまで毎日来てただろ? センパイセンパイって、可愛かったなあ」


あれのどこが可愛いんだ、鬱陶しいだけじゃないか。胸中で反論しながら静かに目を伏せる。
隣の席の田中さんが口を挟んできた。


「んー、でも確かにちょっとしつこかったよね。犬飼くんが困ってるって分からないかなー」


彼女の意見には概ね賛成だ。けれども、他の人の口から美波さんへの批判が出てくるのは何となく気に入らなかった。


『お客様……そちら色違いですけれど、よろしいですか?』


あれから美波さんとは一度も顔を合わせていない。
というより、今までがおかしかったのだ。急に「アドバイスが欲しい」と詰め寄ってきて、こちらの都合も聞かずに連れ回して。挙句の果てに、僕にそういう(・・・・)事情があると知ったら、ぱたりと姿を現さなくなった。

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