虹色のキャンバスに白い虹を描こう


は? と、声が出るかと思った。いや、出ていたかもしれない。
今さら許可取りなんかして、どういうつもりだ。「弱い者」には優しくしてやらないと――そんな情がわいたのだろうか。

まあ、考えるだけ無駄だ。
僕はしっかりと口角を上げて美波さんに笑いかける。


「またスケッチの練習? 熱心だね。いいよ、どうせ暇だし」

「違うんです」


彼女が明確に、自分の意思で僕の言葉を遮った。そして続ける。


「航先輩に、一緒に来て欲しいところがあります。……実は、近くの福祉センターでサークル活動をしていて……美術サークルなんですけど、」


目の前の白い喉が、空気を取り込んだ拍子に揺れる。


「小学生から高校生まで、みんなで楽しくやってるんです。年齢とか上手い下手とか……事情とか、関係なく」


それで、と急くように紡いだ彼女は、次の瞬間。


「航先輩と同じような子もいます。その子は、自分の障害も前向きに捉えて――」

「障害者扱いすんなよ!!」


衝動だった。荒々しく落ちた自分の怒号が、のどかな教室を塗り替えていく。
息を吐いた。必死に吐いた。そうしないと、今にも彼女の胸倉を掴みかねない。

視界が僅かに霞む。驚きと動揺でゆらゆらと定まらない彼女の瞳が憎かった。

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