虹色のキャンバスに白い虹を描こう
3.どんなにくすんでいても
窓の外は立夏の風が吹いていた。
お出掛け日和、とニュースキャスターが言う。そこでようやくゴールデンウィークか、と腑に落ちた。
特に予定もなければ、進んで誰かを誘う気にもならない。
ゴミ箱に捨てたばかりの紙切れに視線を落とし、ため息をついた。なんとはなしにそれを拾い上げ、もう一度開いてみる。
連休に入る前、下駄箱に入っていたものだ。小さなメモ帳にどこかの住所が書いてある。学校からさほど離れていない場所のようだった。
『帰れっつってんだろ!』
自分の記憶の声が脳内で反響したのと、思わず顔をしかめたのは同時だった。その直後に酷く悲しげな表情を浮かべた彼女のことまで芋づる式に思い出してしまい、苦々しくなる。
だからといって、別に後悔はしていなかった。自分が悪いとも思わなかった。
土足で踏み込んできたのは向こうが先だ。こちらにも追い返す権利くらいあるだろう。
周りの空気が、周囲の自分への対応が変わったのは、嫌でも分かった。まるで磁石の同極のように、近付けば何もしなくても離れていく。
所詮その程度か。お前らも、――僕も。
紙切れを握る。握り潰す。
「……くそ」
魔が、差した。