虹色のキャンバスに白い虹を描こう
『航先輩はどう思います? このスカート』
いいんじゃない。適当にそう返して、僕には本当の色が見えていなかった。
あの日、調子が悪かったわけじゃない。それを物語るように、いま改めて日の当たる場所で見た彼女のスカートは、やはりどれだけ目を瞠っても淡い黄色だった。
結局買ったのか。まあ、別にどっちだっていいけれど。
「来てくれたんですね。……良かった」
安堵の息を吐き、彼女が僅かに頬を緩める。
と、それまでずっと黙り込んでいた、彼女の隣にいる男が口を開いた。
「……お前か」
低く唸った彼は、僕と同じ高さの視線でこちらを威嚇してくる。途端、大股で距離を詰めてきたかと思えば、僕の胸倉を掴んで噛みつくように告げた。
「お前、清に『障害者』って言ったらしいな」
「は、」
一体何を言っているのか、何を言われているのか。さすがに想定外で、咄嗟には理解できなかった。
そんな僕に、男はなおも畳みかける。
「自分が何言ったのか分かってんのか。言っていいことと悪いことが――」
「ま、待ってお兄ちゃん!」