虹色のキャンバスに白い虹を描こう
そう、確かに言われたことがあった。
色覚異常は、それ自体は別段珍しいものじゃない。だからといって、先天性のそれが治るわけでもない、と。
「とか何とか言ったけど、これも俺の意見だな。……お前の話、聞いてやるよ」
声を低めた彼が静かに、それでいて力強く、問いただしてくる。
「なあ、航。お前はどういうつもりで清に言った?」
何の遮蔽物もなく真っ直ぐかち合った視線。収まったはずの苛立ちが下から這い上がってくる。
どういうつもりで――そんなの、こっちのセリフだ。
「その言葉、あんたの妹にそのまま返すよ」
先に「障害」と持ち出してきたのは彼女の方だ。なぜ僕が彼に責められなければならない?
僕の態度が気に入らなかったのか、もしくは理解できなかったのか。彼は眉をひそめ、怪訝な顔つきで聞き返してくる。
「どういう意味だ?」
「二十人に一人――その『一人』が、今あんたの目の前にいるって話」
わざわざ打ち明けるつもりはなかった。知られたところで、粗末な同情をされるだけだ。だから今まで周りには隠してきたというのに。
彼が息を呑む気配がした。瞳のフィルムに僕の姿を焼きつけているかのように、じっと見つめて、瞬きでシャッターを切る。
「お前、まさか」