虹色のキャンバスに白い虹を描こう
4.依然として青い
天気は変わらない。今日は一日中晴れだろう。
福祉センターの向かいには、申し訳程度の遊具が設置された公園があった。それでも連休というだけあってか、親子連れで賑わっている。
帰る、とだけ伝えて部屋を出た僕を追いかけてきたのは、美波さんだった。
少し話がしたいという彼女の要望に、二人で公園のベンチに腰を下ろす。
「ごめんなさい」
彼女の第一声は謝罪だった。それに答えないままでいると、美波さんが続けて話し出す。
「不快な思いをさせてしまいましたよね。デリケートな問題なのに、軽率でした」
確かに、誰が聞いているかも分からない教室の入り口であの話をされたのは、未だに根に持っている。けれども彼女の境遇を知ってしまった今、一方的に怒りをぶつけるのも違うような気がしていた。
この瞬間、僕が抱いている感情こそが「同情」なのではないかと、苦い発見が脳裏をよぎる。
「……こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけど、私、ちょっと嬉しかったんです。航先輩は絶対に手の内を明かしてくれないじゃないですか。でもあの時は、本当に少しだけ、航先輩に近づけた気がしたので」