虹色のキャンバスに白い虹を描こう
そう言った僕の方こそ、薄っぺらい意見を述べているのかもしれないけれど。やっぱり、彼女には図々しくて強気な方が合っていると思った。
「少なくともあの子には君の言葉が必要だったでしょ。僕は別に、薄っぺらいとも思わなかった」
返答がない。訝しんで彼女の方に目をやると、視線が交わる。
「航先輩は、やっぱり優しいですね」
「は?」
「ユイちゃんにも伝わったんだと思います。だからあんなこと言ったんだろうなあ」
彼女の凪いだ瞳が、ぼんやりと遠くを見つめるように揺れた。
『お兄ちゃん、ユイと友達になってくれる?』
了承するのが一番丸く収まるだろうと思ったから首を縦に振ったのに、その子は小指を差し出してきた。約束、という単語まで引っ張り出して。
『またここに来てね。約束だよ』
厄介事が、更に厄介を招いた。それでも小指を結んだのは、確かに自分の意思だった。
「航先輩。私たちと一緒に、『なないろ』で活動しませんか」
きっと彼女ならそう言うんだろうと、どこかで予想はしていたことだった。最初からそのつもりで僕を呼んだのだろう。
「……しない」
「どうしてですか?」