虹色のキャンバスに白い虹を描こう
*
学校での身の振り方に少々困っていた。
連休明け、変わらず話しかけてきたショータに戸惑いつつ、それでも大多数は僕と目を合わせようとしない。隣の席の田中さんは、怖いもの見たさといった様子で時々こちらを見やるけれど、以前のように自分から話を振ってくることはなくなった。
『明日の放課後、玄関で待ってます』
昨日の別れ際、美波さんの言葉。僕の返事を聞く前に、それじゃあ、と沈み始めた夕陽に歩いていった彼女の背中が、脳裏に濃く焼き付いている。
その日の授業を終えて下駄箱へ向かうと、退屈そうに爪先をぱたぱた動かしながら俯いている美波さんの姿があった。
声を掛けようか、掛けるにしてもなんて言おうか――逡巡していた矢先、彼女が唐突に振り返る。
「あ、航先輩!」
数歩近付いてきた彼女に、僕はようやく我に返って靴を履き替えた。
咄嗟に顔を伏せてしまったのには、特別な理由などない。ないのだけれど、ただ何となく、目を合わせるのが気まずかっただけだ。
「遅いですよ~。結構待ってたんですからね」
「ああ……ごめん」
かなり時間をかけて階段を下りてきたという自覚はあった。
外靴に履き変わった爪先を二回地面に叩きつけたところで、視線を感じて顔を上げる。
「なに?」
学校での身の振り方に少々困っていた。
連休明け、変わらず話しかけてきたショータに戸惑いつつ、それでも大多数は僕と目を合わせようとしない。隣の席の田中さんは、怖いもの見たさといった様子で時々こちらを見やるけれど、以前のように自分から話を振ってくることはなくなった。
『明日の放課後、玄関で待ってます』
昨日の別れ際、美波さんの言葉。僕の返事を聞く前に、それじゃあ、と沈み始めた夕陽に歩いていった彼女の背中が、脳裏に濃く焼き付いている。
その日の授業を終えて下駄箱へ向かうと、退屈そうに爪先をぱたぱた動かしながら俯いている美波さんの姿があった。
声を掛けようか、掛けるにしてもなんて言おうか――逡巡していた矢先、彼女が唐突に振り返る。
「あ、航先輩!」
数歩近付いてきた彼女に、僕はようやく我に返って靴を履き替えた。
咄嗟に顔を伏せてしまったのには、特別な理由などない。ないのだけれど、ただ何となく、目を合わせるのが気まずかっただけだ。
「遅いですよ~。結構待ってたんですからね」
「ああ……ごめん」
かなり時間をかけて階段を下りてきたという自覚はあった。
外靴に履き変わった爪先を二回地面に叩きつけたところで、視線を感じて顔を上げる。
「なに?」