虹色のキャンバスに白い虹を描こう
僕の問いかけに、彼女は大きく空気を取り込むように口を開けた。
「航先輩がごめんって言った……」
「は?」
「だってだって、あり得ないじゃないですか! 絶対に今のは『そんなの、君が勝手に待ってただけでしょ』とか言う感じでしたよね?」
僕の真似でもしてるつもりなのだろうか。わざとらしく声を低めて眉間に皺を寄せた彼女は、やけにテンションが高い。
「バカにしてるの?」
「まさか! 感動してます、とっても!」
そこまで力説されると、かえって嘘くさいのだけれど。
顔をしかめた僕に、美波さんが「早く行きましょう」と急かしてくる。以前彼女と訪れた、閑静な住宅街の中にある公園。そこでスケッチの練習をするらしい。
電車に乗りながら、彼女はどうでもいい話を一方的に浴びせてきた。
食べ物で一番好きなものはいちご。最初にいちごを見た時、あまり美味しそうに思えず、食わず嫌いをしていたそうだ。
「だって緑色でブツブツだし……甘酸っぱい味がするなんて想像つかなくないですか?」
「それは君の主観でしょ。いちごは赤いんだよ」
「航先輩だって、私のこと言えないくせにー!」