虹色のキャンバスに白い虹を描こう



それから、彼女と過ごす時間が圧倒的に増えた。

美術部は水曜日、「なないろ」は土曜日。両方に所属している美波さんは、週に二日、その活動に当てている。
学校がある日は、必ずと言っていいほど僕を連れてスケッチの練習へ赴く。つまり週に四日は彼女と顔を合わせている状態だ。


「だから、この程度でいいやじゃなくて、ちゃんと対象を観察しろって言ってるんだけど」

「やってますよ! 私なりに真面目に!」

「いや足りない。全っ然分かってない。いいから、ちょっと貸して」


む、と頬を膨らませた美波さんが、渋々といった様子で僕にスケッチブックと鉛筆を手渡してくる。
彼女のスケッチの隣。空いたスペースに鉛筆の先を滑らせた。

ピンク、だろうか。大きめの花びらが沢山ついた、ボリュームのある一輪花。近くに咲いているこの花を、彼女は描こうとしているようだ。


「カーネーション、可愛いですよね。私、一番好きかもしれないです」


黙々と作業を進める僕を横目に、彼女が呟く。


「あ、そういえばこないだ母の日でしたけど、航先輩は何かしました? 私はそれこそ、カーネーションを渡したんです」

< 70 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop