虹色のキャンバスに白い虹を描こう
*
それから、彼女と過ごす時間が圧倒的に増えた。
美術部は水曜日、「なないろ」は土曜日。両方に所属している美波さんは、週に二日、その活動に当てている。
学校がある日は、必ずと言っていいほど僕を連れてスケッチの練習へ赴く。つまり週に四日は彼女と顔を合わせている状態だ。
「だから、この程度でいいやじゃなくて、ちゃんと対象を観察しろって言ってるんだけど」
「やってますよ! 私なりに真面目に!」
「いや足りない。全っ然分かってない。いいから、ちょっと貸して」
む、と頬を膨らませた美波さんが、渋々といった様子で僕にスケッチブックと鉛筆を手渡してくる。
彼女のスケッチの隣。空いたスペースに鉛筆の先を滑らせた。
ピンク、だろうか。大きめの花びらが沢山ついた、ボリュームのある一輪花。近くに咲いているこの花を、彼女は描こうとしているようだ。
「カーネーション、可愛いですよね。私、一番好きかもしれないです」
黙々と作業を進める僕を横目に、彼女が呟く。
「あ、そういえばこないだ母の日でしたけど、航先輩は何かしました? 私はそれこそ、カーネーションを渡したんです」
それから、彼女と過ごす時間が圧倒的に増えた。
美術部は水曜日、「なないろ」は土曜日。両方に所属している美波さんは、週に二日、その活動に当てている。
学校がある日は、必ずと言っていいほど僕を連れてスケッチの練習へ赴く。つまり週に四日は彼女と顔を合わせている状態だ。
「だから、この程度でいいやじゃなくて、ちゃんと対象を観察しろって言ってるんだけど」
「やってますよ! 私なりに真面目に!」
「いや足りない。全っ然分かってない。いいから、ちょっと貸して」
む、と頬を膨らませた美波さんが、渋々といった様子で僕にスケッチブックと鉛筆を手渡してくる。
彼女のスケッチの隣。空いたスペースに鉛筆の先を滑らせた。
ピンク、だろうか。大きめの花びらが沢山ついた、ボリュームのある一輪花。近くに咲いているこの花を、彼女は描こうとしているようだ。
「カーネーション、可愛いですよね。私、一番好きかもしれないです」
黙々と作業を進める僕を横目に、彼女が呟く。
「あ、そういえばこないだ母の日でしたけど、航先輩は何かしました? 私はそれこそ、カーネーションを渡したんです」