虹色のキャンバスに白い虹を描こう


ぱちくりと目を瞬かせた少女の、あどけない問いが落ちる。
そうだけど、と返した僕に、相手は満足そうだった。


「わたるお兄ちゃん、ありがとう!」

「え、ユイちゃん……!」


踵を返したツインテールが、用は済んだとばかりに去っていく。
それを数秒黙って見送っていると、「もう!」と隣から声が上がった。


「どうするんですか、今後のユイちゃんの人格形成に影響を与えたら!」

「そんなの僕には関係ないんだけど」

「大ありですよ! 既に専属アドバイザーじゃないですか!」


勝手にそんなものに任命されては困る。眉根を寄せた僕に、負けじと美波さんも頬を膨らませていた。


「とりあえず、お前ら二人とも立て。時間ねーんだから、とっとと行くぞ」


頭上から降ってきたのは、美波さんの兄の声だ。
彼の呼びかけに立ち上がり、小さく息を吐く。

みどりのつどい、と表記されたチラシが貼ってある入口を抜け、会場に入った。


『今週末、福祉イベントがあるんです。それに「なないろ」もサークル単位で参加することになったんですけど、人手が足りなくて。航先輩、ついてきてもらえませんか?』

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