虹色のキャンバスに白い虹を描こう
事の発端は美波さんのそんな発言だ。
土曜日曜の二日間にわたって開催されるらしいそのイベントは、街中の市民センターが舞台だった。
ものづくり体験やちょっとしたゲームの他、実際に車椅子に乗ったり点字の本を読んだり、そういう体験ができるという。絵画展示という形で「なないろ」は参加するそうだ。
開場前に訪れたのは、準備のためである。
とはいえ、それぞれの団体の持ち場の準備だけであって、そもそもの会場設営は既に完了した後のようだった。
折れ曲がることのないようにここまで持ち運んできた絵を、美波さんが取り出す。
「はい、これ」
躊躇なく差し出されたそれを条件反射的に受け取ってしまってから、彼女を見やった。
「え?」
「私、画鋲を渡すので、航先輩が貼ってくれませんか?」
「何で僕が……」
「だって私じゃ一番上まで届かないんですもん」
威張るように主張されても。誇ることでも何でもないのに、なぜそんなに自信たっぷりなのか。
年長者である彼女の兄に視線を送ったけれど、素知らぬ顔で無視された。仕方ないので引き受けることにする。
特にテーマは決めず、自由に描かれたものがほとんどだった。
構成員の七割が小学生である「なないろ」の絵画コーナーは、伸び伸びとしていて少々眩しい。
「……美波さんは?」