虹色のキャンバスに白い虹を描こう
背後から元気いっぱいの叱り声が飛んできたかと思えば、少年たちは「げっ、ユイだぁ」と顔をしかめた。まるで口うるさい母親に見つかったかのような仕草である。
「タイガ、おまえ、ユイとけんか中じゃなかった?」
「戦争だよ、まじでユイ、怒ったらこえーもん」
「ぶはは。ふーふ漫才ってやつじゃないの?」
「それ言うなら、めおと漫才でしょ」
「めおとってなに?」
「だからー、結婚ってこと!」
「はあ!? おれとユイがそんなわけないし!」
一気に騒がしくなった彼らの真ん前で、ユイという名の母が腕を組んだ。
「ユイ、聞いてたんだからね。ちゃんと謝りなよ、わたるお兄ちゃんに!」
「はぁあ? ユイには関係ねーだろ! このにーちゃんだって謝んなくていいって言ったし! てか、ユイ、何でこのにーちゃんのこと知ってんの」
「関係あるもん。わたるお兄ちゃんに、タイガくんとけんかしたって言ったもん。ユイ、絶対絶対謝んない! タイガくんが謝るまで、許さないから!」
タイガが僕を振り向く。どこかやさぐれたような、それでいて不安げな彼の顔つきに、我慢できず眉根を寄せてしまった。……小学生のロマンスに巻き込まれるのは御免だ。
「謝りたくないなら、謝らなくていいんじゃない」