虹色のキャンバスに白い虹を描こう


「……ほんと、兄妹そっくりだわ」


どんなに疎み合っても、笑い合っても、繋がっていくもの。だからといって必ずしも明るい未来が保証されているわけではなくて、いま明るく見えるのは、彼らが時間をかけて築いた光だ。

何だよそれ、と嬉しそうに笑う彼は、本当にシスコンだと思う。


「お、帰ってきたんじゃねえの」


純の向ける視線の先には、美波さんの姿があった。
強張った表情で歩いてくる彼女に、違和感を覚える。

美波さんの後ろに続いて、こちらへ近づいてくる人影が二つ。その人物の顔を認識した刹那――絶句した。


「一緒にいるのって、清の友達か?」


すぐそばで聞こえる質問にも、反応する余裕はなかった。

全身から血の気が引く。指先が震えて、強く拳を握る。
逃げたい、逃げ出してしまいたい。確かにそう思うのに、両足は根が生えたように地面から離れなかった。

視線すら逸らせないまま、彼女(・・)が僕の目の前で立ち止まる。伏せっていた真ん丸の瞳がゆっくりと僕を映して、遠慮がちに、心許なく揺れた。


「犬飼くん。久しぶり、だね」


柔らかく紡がれた僕の名前に、嫌悪の色は見当たらない。それにひどく安心して、同じくらい動揺していた。


「……(つくも)先輩、どうして」


どうして、彼女がここにいるのだろう。
もう二度と顔を合わせないのだと思っていた。否、合わせるべきではないと、思っていた。

気弱な先輩が眉尻を下げる。何一つ変わっていない。素朴で優しい表情をたたえて、彼女は告げた。


「犬飼くんに、会いに来たよ」

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