虹色のキャンバスに白い虹を描こう
純粋な興味だ。僕は白先輩を追いかけて美術部に入り、彼女にたくさん話しかけた。
何を考えて行動しているのか、どう感じてどう伝えるのか。白先輩はどういうフィルターをもって世界と接しているのか、知りたかった。
彼女にも僕と同等に穢い部分があるのではないかと、少しだけ期待していたのかもしれない。つつけばどこかでぼろが出る。なのに――
綺麗、という第一印象は、いくら話しても崩れなかった。
誰にでも優しくて平等で、まるで女神のような人。
外見のことを言っているわけじゃない。白先輩より美人だとか可愛いだとか褒めそやされている女子は、腐るほどいた。
違うのだ。白先輩は、そういう次元とは全く違う。
ゆっくり毛布で包んでくれるような、柔らかい温かさだ。誰かのために平気で自分を犠牲にできるような、高尚な人だ。
正直、美術なんてどうでも良かった。白先輩が吹奏楽部だったらそこに入っていただろうし、テニス部だったら僕も同じくラケットを握っただろう。
何の感慨もなく描いた僕の絵を、周りは褒めちぎった。別に嬉しくも何ともなかった。
「アドバイスなら部長に貰った方がいいよ」