クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「君が好きだった。だから、別れたくないのに離婚を切り出してしまった。」
「どうして…?好きだって思ってくれてたのに?」
困惑する梓の顔を見るのは辛かった。だが、今話さなければ取り返しがつかない。
航は両手をぐっと膝の上で握りしめ、眉間に皺をよせたままだ。
「自分に自信が無くなってた。君には幸せになって欲しくて…。
それには君を自由にする事、離婚しか無いって決めつけたんだ。」
「私は…家を出た事を後悔していたの。ギリギリまで、離婚は嫌だった…。」
「梓、本当にすまない。あの日、君に言った言葉すら覚えていなかった。」
「やっぱり…。」
「君に弱みを見せたく無くて、目一杯強がりを言ったんだと思う。」
「もう、忘れて…あなただけの罪じゃない。私も意地を張っていたの。
兄にも言われたわ。もっとシンプルに考えろって。」
「そうか、健吾さんがそんな事を…。」
「あの日の事で、お互いに傷つけ合うのはやめましょう。」
航の肩から力が抜けた。握りしめていた手を解くと梓に微笑んだ。
「今なら、素直に言える気がするよ。10年ぶりに会えて嬉しかった。」
「あなたの会社での事ね。」
「思わずキスして、やっぱり君が大好きだって思い知らされたんだ。」
「10年ぶりなのに?」
クスッと梓が笑った。優しい笑顔だ。
「女とは縁の無い暮らしをしてたんだ…。だけど、君は違った。」
「私が?違う?」
「君が…欲しくてたまらなかったんだ。」