クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
気がつけば、梓はベッドの上に横たわっていた。
どうやってあのソファーからここに来たのか記憶が無い。
「起きたか?」
ベッドの横から航の声がする。
「今…何時?」
「そろそろ10時かな。」
「え?」
「夜の、10時だ。」
「ええっ!」
梓は飛び起きた。あれから半日ずっと愛しあっていたのか…。
航が置いてくれたのだろう。脱ぎ散らかしたはずの梓の洋服や下着が
ベッドの側にきれいに揃えて置いてあった。
恥ずかしさに赤面しながらシーツの陰で下着をつけ、洋服を着た。
「身体は…その…辛くないか?」
『ああ、久しぶりだってわかったのね…』
ますます、恥ずかしさで身の置き所が無い。
「大丈夫。ごめんなさい、あなたのベッドで寝てしまって…。」
「いや、無理させたかなと思って…。」
いつもクールな航が、少し照れくさそうにしている。
『こんな顔をする人だったかしら…』
学生時代から、照れて耳たぶを赤くしている航を見た記憶が無かった。
10年の歳月が、お互いを違う角度から見られるようにしてくれたのだろうか。
「大変、母に連絡しなくては!美晴のお迎えに…」
「大丈夫、健吾さんに連絡しておいた。君がこっちに泊まるって。」
「あ…。そうなんだ…。」
『屋代家の皆に、今日の事は筒抜けだ。明日、何て説明しよう。』
梓の焦る気持ちが伝わったのか、航がそっと彼女に言った。
「明日、一緒に行くよ。ご挨拶にね。」
「挨拶?」
「モチロン、再婚のね。」
「航…。」