クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
屋代美晴の父親は、美馬航だ。
梓が半年だけ結婚した相手、美馬航。
彼は、梓が妊娠した事を知らない。
彼には何も伝えずに、梓は美晴を産んだのだ。
『子供なんか出来てたら、最悪だったよな。俺たち。』
『良かったよ。子供作らなくて。』
『子供がいないから、キレイに別れられる。』
離婚届にサインしながら、美馬航はそう言ったのだ。
彼の言葉を聞いた梓は、酷く落胆したのを覚えている。
あれを聞いたばっかりに、妊娠を告げる事が出来なくなってしまった。
離婚届に印鑑を押した日だった。学生時代から行きつけのカフェで…。
サインと押印が終わると、航はさっさとカフェから出て行った。
梓にとって、胃がキリキリと痛む思い出だ。
『彼に愛されていると思っていたけど、別れる時って残酷になれるんだ。』
あの日、彼から別れる妻への労わりとか気遣いとか一切感じられなかった。
あれから10年、もう二度と会う事も無いと思っていた人に再会するとは…
しかも、彼からキスされるなんて思ってもいなかった。