クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
大学時代に、お互いの友人同士が恋人だった関係で出会った航と梓。
グループ交際から始まった恋だった。
友人の竹本信也と川村由梨のカップルと
何となく4人で過ごすうちに、航と梓は二人とは離れて歩いたり、
出掛けても先に帰ったりするようになっていった。
梓は4人でいるより、一刻も早く航と二人きりになりたかったのだ。
いつも笑顔の竹本とは違って、航は少し斜めに構えた性格だった。
クールな彼が時折見せる、微かに口角を上げて笑っている顔が大好きだった。
わざとぶっきら棒な口の利き方をする癖に、心配性なところも大好きだった。
あれが、恋だったのだろう。
梓にとって生まれて初めての、パッと燃え上がる様な熱い想いだった。
航と常に一緒にいたい。彼の側に女子がいると気になってしまう。
あの頃は、彼も梓の事を大切に思ってくれていると信じていた。
航と梓の転機となったのは、竹本と川村が卒業を待たずに結婚した事だろう。
川村由梨が妊娠したので、学生結婚する事になったのだ。
仲が良くて幸せそうな二人の側にいたせいで、流されてしまったのだろうか…。
卒業と同時に航と梓も結婚してしまった。
確かに航は、母一人子一人で育ったから早く家庭を持ちたいと言っていた。
梓の両親と兄も航を気に入っていたから、トントン拍子に話が進んだのだ。
あの時の勢いは何だったのか、今でもわからない。
卒業式の数日後、身内だけでままごとの様な結婚式を都内のチャペルで挙げた。