クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
夕方になると、屋代家で預かっていた子の母親が次々と迎えに来る。
グッド・クリーンのパート社員は、早番なら15時、遅番でも18時で仕事が終わる。
「社長、お世話になりました。」
「こっちこそ、急に無理頼んでゴメンね。」
「さようなら、おばあちゃん。」
「またね。」
「お疲れさまでした~。」
母親に手を引かれて、子供達はニコニコ顔で帰って行く。
社員の子供達から『おばあちゃん』と呼ばれて、良子はご機嫌だ。
「可愛いわねえ…。」
良子の孫は、梓が生んだ美晴だけ。
長男の健吾は去年結婚したばかりで、子供はまだいなかった。
嫁の佳苗の前では決して子供の話をしない良子も、つい心の声が漏れていた。
「さて、美晴ちゃんとテレビでも見ようかな。」
良子は、孫の側でのんびりしようとリビングに向かった。
土曜の夕方には、美晴の好きなアニメ番組がある。
リビングのソファーでテレビを見ていた美晴に、梓が声を掛けていた。
「美晴ちゃん、今夜おばあちゃんの家に泊まってもいい?」
「どして?」
「お母さん、伯父さんとお話があるの。ダメかな?」
「いいよ。宿題持って来てるから、こっちで泊っても。」
「ありがとね。」
「おや、今日は美晴ちゃん泊ってくれるの?」
美晴の隣に座りながら、良子は嬉しそうだ。
「うん!お母さん伯父さんとお話があるんだって。」
「そう?だったら、離れのおばあちゃんの部屋にお布団敷こうか?」
「賛成!今日はおばあちゃんと一緒に寝ようね。」
美晴もご機嫌だ。おばあちゃんが大好きなのだ。
やっと屋代家では、夕食作りが始まった。
子守で疲れただろうから良子は休憩させて、梓がキッチンに立つ。
今日は梓と美晴がいるから、カレーにしよう。
料理をしながら、兄であり屋代セキュリティーの社長を務める健吾の帰宅を
今か今かと、梓は待っていた。