クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「言えるわけないじゃない。離婚届を書きながらあの人なんて言ったと思う?」
いきなり尋ねられて、佳苗は戸惑った。
「さ、さあ…?」
「子供なんか出来てたら、最悪だった。良かったよ、子供作らなくて。
子供がいないから、俺たちキレイに別れられるよなって言ったのよ。」
「えええっ!人としてどうなの、そのセリフ!」
「でしょう?そんな人に言える訳ないじゃない。あなたの子供が出来ましたって。」
梓はお腹を触りながら言った。
「ここに、あなたの子供がいますって。」
「ああ…。わかる…。」
佳苗も経緯を聞いて、納得できたようだ。
「私なら、健吾にそんなこと言われたら、一発殴ってるわ。」
「こえ~奥さん、恐いわあ。」
ビールを飲もうとジョッキを持った手を止めて、健吾が呟いた。
「兄さん、もう二度とあそこの仕事に私を関わらせないで下さいね!」
「わ、わかりました…。」
元ラガーマンで、かなり体格の良い健吾が小さな声で約束した。
やはり10年経っても、妹に美馬航の話は厳禁だ。
「じゃ、そういう事なので、おやすみなさい。」
兄夫婦に宣言して勢いよく立ち上がると、
梓は実家に来た時利用している一階の奥の部屋に向かった。
怒りに任せて言いたい事をはっきり告げたから、今夜はゆっくり眠れそうだ。