クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「ねえ、健吾…。」
「うん?」
二人きりになった夫婦は、ビールを飲みながらそれぞれ思いを巡らせていた。
「あのね、今日グッド・クリーンに仕事の依頼があったのよ…。」
「ああ…。」
ボンヤリと健吾は妻の話を聞いていた。
「それがねえ…。」
「どうかしたか?」
妻が言いにくそうにしている事に気がついた。
「その仕事っていうのが、梓ちゃんから聞いた美馬航って人の秘書からで…。」
「うん?」
「美馬さんが新しく購入したマンションの片付けを依頼されました。」
「そうか。仕事だから、しょうがないよな。」
「でもねえ…。」
「まだ、何かあるのか?」
「その仕事は、『屋代さん』ご指名なの。」
「はああ?」
「きっと、今日偶然会っちゃった梓ちゃんをご指名なんだわ…。」
「アイツ…。」
健吾は、10年前最後に会った時の美馬を思い出していた。
妹との別れ話が決まった頃だったか…。
『梓の事、どうかよろしくお願いします。』
そう言って、彼は健吾に深く頭を下げたのだった。