クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
まだ若かった妹の結婚に、健吾も最初は反対していた。
大学で出会って、一気に盛り上がった二人だ。
すぐに熱も冷めるだろうと、気にも留めていなかった。
だが、屋代家に挨拶に来た美馬航は
とても無口だが誠実な青年で、梓を大切にしている様に見えたのだ。
6年前に亡くなった父は、とても彼を気に入っていた。
早くに父親を亡くして、母一人子一人で育ったという航は
屋代家の様な賑やかな家庭に憧れていたと言って、直ぐに溶け込んだ。
たった半年で別れるなんて、誰も思っていなかった。
夫婦の事は当事者にしか理解出来ないというが、妹の離婚も謎だらけだ。
どちらかと言えば大雑把な健吾にしてみれば、
離婚理由として二人が上げた『性格の不一致』なんて大したことないのだ。
人間みな個性がある。性格が一致する方が気持ち悪い。
梓はあの頃、『航さんが理解できない』と言って泣いていた。
彼の為に働いた。彼の為に、家事も手抜きしなかった。
だけど、彼は何も言ってくれなかった…
『ありがとう』も『すまない』も何も…
褒めてほしいわけでも、感謝して欲しい訳でもない。
何でもいいから声に出して言って欲しかった。
『彼は私を無視してる』と言って、梓は泣いていたのだ。