クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


『何、この人カワイイ…。』

梓や健吾から10年前の経緯を聞いたばかりの佳苗は、
美馬航がどんな鬼畜野郎かと興味津々だったのだ。

しかし、堂々とした体躯のイケメンで頭脳明晰と評判の社長が
目の前に立つ自分を見てガックリと項垂れる様子は見ものだった。
梓を期待していたのは、一目瞭然だ。

『あからさまに、間違えたって顔よね…。』

彼はきっと、梓を指名したから今日は会えると思い込んでいたのだろう。
梓がグッド・クリーンの社員では無いと伝えるべきか、佳苗は迷った。

『いや、ダメダメ。梓ちゃんは会いたく無さそうだったもの。』

二人の関係に余計な口を挟むのは止めておこう。健吾に叱られそうだ。

「それでは美馬様。お部屋の掃除で、ご希望などがありましたら承ります。」

「特に何も…。お任せします。早くここで生活を始めたいので。」

「わかりました。今日中には完了させます。」

「よろしく。終了の連絡をいただけたら、鍵は秘書の芳賀が受け取りに来ます。」
「では、その時に業務完了の確認とサインをお願いいたします。」

航は表情を失くしたまま、芳賀と仕事に戻って行った。

佳苗はその姿を見て、思っていたイメージと実物は違うんだと納得した。
実際に会って話してみないと、本当はどんな人物かなんてわからないものだ。


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