クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


『それにしても、立派なマンション…。』

新宿にある美馬のマンションは、豪華な内装だった。
航の趣味とは思えない、淡いピンクを基調にした女性的な雰囲気の部屋まである。

『独身って聞いてたけど、婚約者でもいるのかしら…。』

2人連れてきたスタッフに声をかけながら、佳苗はどんどん仕事を進めた。

キッチン、リビング、ダイニング…。あまり物を置かない主義らしい。
料理の道具もほとんどなく、生活感は殆どない。

書斎や寝室など、プライベートな部分は荷物が多いので佳苗が受け持った。
貴重品がある部屋は責任者としてキチンと掃除したかった。

何冊もある本を大きな棚に並べていたら、カチャッと金属音がした。
2冊ある経済史の分厚い本同士の間に挟まっていたようだ。

『本と同じサイズの…写真立てだ。』

荷作りの時に紛れ込んでいたのか、意図的に本の間に挟んでいたのか…。
もしかしたら、所有者も気付いていないかもしれない。
割れていないかそっと持ち上げて確認した。

『良かった、無事だわ。』

床に落ちた写真立ての中のには、結婚式のものらしい写真が入っている。
タキシードの男性とウエディングドレスの女性が寄り添っていた。

後にチャペルが見えるから、式を挙げてすぐの表情だろう。
シルバーのフレームの中の二人はこぼれそうな笑顔だ。

『あ…これって…。』

シンプルなドレスだが、華奢な姿を見間違えるはずがない。

『梓ちゃんだ。』



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