クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
そこには、10年前の梓と美馬航が映っていた。
二人とも輝いていた。幸せそうな笑顔だ。
結婚式なのだから当たり前かもしれないが、
その後、半年で別れた事を知っているだけに佳苗は複雑な気持ちだった。
『でも、写真を残していたんだ…美馬さん。』
キチンと写真立てに入れたまま、この写真を持っていたのだ。
別れた妻との結婚式の写真何て、捨ててしまえばいいのに。
今朝会った時の美馬航の表情が思い出される。
梓ではなく、佳苗が清掃に訪れたとわかった時のあの表情…。
彼は、物凄く梓に会いたかったのではなかろうか。
10年会っていなかった元夫婦にどんな感情があるのかわからないが、
写真を持っていた事といい、彼の表情といい、
梓に会いたがっている気持ちに嘘はなさそうだ。
『みいちゃんの事もあるしなあ…。』
佳苗一人で抱えるには、義理の妹の過去は重すぎる。
『仕事が終わったら、健吾に相談してみよう。』
そう結論付けて、佳苗は仕事に集中した。
この豪華な空間に、美馬が独りで暮らすと思うと余りにも寂しすぎる気がした。
もし、梓と彼が離婚していなかったら、
もし、妊娠を告げて離婚を思いとどまっていたら、
この部屋で美晴を囲み家族三人で暮らしていたかもしれない…。
何とも言い難い、チクリとした胸の痛みを佳苗は感じていた。