クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


 いよいよ講座が始まる金曜日の朝、梓は娘に何度も言い聞かせていた。

「美晴ちゃん、良子おばあちゃんが小学校まで迎えに行ってくれるから
 ちゃんと学校で待ってるんだよ。」
「わかった。」

「おばあちゃんちにお泊りして、月曜の朝、お母さんと一緒に学校へ行こうね。」
「でもお母さん、わたし3年生だからお仕事の間くらい一人でお留守番出来るよ。」

「わっかてる。でも、それだとお母さんは美晴の事が心配でお仕事が出来ないの。
 お願いだから、小学生の間はおばあちゃんの家に行こうね。」

「は~い。こういう時にお父さんがいたら便利なんだけどね~。」
「えっ?お父さんが便利?」

「そうそう。お母さんがお仕事でも、お父さんとお留守番出来るでしょ。」

「そうだねえ…。」

「ま、いないものはしょうがないよね。」
「美晴…。」

さばさばと話す娘の姿に、梓の心は揺れた。
美晴が『お父さん』について話すのは初めてかもしれない。



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