クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
パソコン画面のデータを見ながら、何となく清掃員の作業に目が行く。
いつもは何ともなかったのに、どうしてだか今日は気になって仕方ない。
テキパキと掃除機で床の隅々まで掃除していく清掃員をちらりと見た。
何となくそのシルエットに既視感があるのだが…。
女性は、この会社の前社長が趣味で集めていたらしい
焼き物やら彫刻やらが無造作に置かれた飾り棚を丁寧に拭き掃除していく。
無駄のない丁寧な作業。スピーディーな動き。
いつもの年配のふくよかな清掃員がゆったりと行う掃除とはひと味違う様だ。
ぼんやりしていたら、コーヒーカップを倒してしまった。
「ああ…。」
デスクから零れ落ちる茶色い液体がカーペットに染みを作っていく。
こういう時、まず何をすればいいのか航は一瞬固まった。
彼の声に振り向いた清掃員が、無言でデスクの側に来て、
さっさとカップを片付けてくれた。
「すまない…。ぼんやりしていて…」
清掃員は、また無言で一礼すると、
カーペットにこぼれたコーヒーの染み抜きをし始めた。