クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


娘に『お父さん』はどんな人なのか、何て言おうか梓は考え込んでしまった。

美晴は、自分には父親がいない(・・・)事を何となく理解はしているが
その理由までは知らなかった。

幼稚園の頃に、子供特有の残酷な表現でお友達と交わした言葉から、
父親については母親に聞かない方がいいと思っていたのだ。


『みいちゃんのお父さんはどこ?』
『お父さんは、家にいないの。みいちゃんにはいないの。』

『死んじゃったの?』
『わかんない。』
『みいちゃんのパパ死んじゃったのね。』
『わかんない。』

『お母さんにパパは死んじゃったのって聞いてみたら?』
『いやだ。お母さんはお父さん大好きって言ってたから。
 死んじゃったのって聞いたら可哀そうだもん。』

幼稚園児の他愛ない会話だったが、この時から美晴の中で父親は
この世界の何処にもいない(・・・)人かもしれない事になったのだ。





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