クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「お久しぶりです。お義兄さん…と呼んでもかまいませんか?」
「航君…10年経っても、兄貴と思ってくれるのかい?」
「ええ…僕にとって、生まれて初めてできた兄弟でしたから。」
「そうだったなあ…。」
健吾は航から視線を外して高層ビルの窓から遠くまで見通せる空を見つめた。
10年とは、余りにも長い時間だった。
「実は、お義父さんがお亡くなりになった事を最近知りまして…。
出来たら、お仏壇にお線香をあげさせていただけませんか?」
「それは構わないが…。君は忙しいだろう。」
「今日は大丈夫なんです。お義兄さん、この後のご予定は?」
「金曜ですから、このまま帰宅する予定です。」
「じゃあ、突然で申し訳ありませんが、ご一緒していいですか?」
健吾は一瞬のうちに、頭の中をフル回転させた。
梓と美晴の予定を思い出そうとする。どうも何か大事な事を聞いた気がする…。
思い出せなかった。
返事を待たせる事も出来ず、ままよとばかりに承諾した。
「わかりました。どうぞ。」
取り敢えず、何かあったらあったに時に考えようと健吾は腹を決めた。
「世田谷の家は…。」
「覚えています。良かったら、社の車を出しましょうか?」
「いえ、自分も車なので…。先に出てお待ちしています。」
健吾は社長室を出るやいなや、妻に連絡した。