クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
取り合えず、健吾が笑ってごまかした。
「拓斗~、立派だなあ~。でも、パンツは、はこうなあ~。」
良子がその声にハッとして、拓斗を抱え上げた。
「ゴメンなさいね、航さん。社員の子供を我が家で預かっているの。
申し訳ないけど、私はこれで失礼させていただくわ。」
そのまま軽く会釈をして、美晴を促してリビングへ行こうとした。
だが、普段の躾が良かったので、美晴はキチンと挨拶をしたのだ。
「いらっしゃいませ。」
ペコリと頭を下げると、良子の後を追って行った。
「お嬢さんですか?」
「ええ? ええ…まあ、そのような…。」
健吾はしどろもどろだ。佳苗の方が落ち着いている。
「せっかくお越しいただいたのに、申し訳ございませんでした。」
「いえ、急に伺いまして、こちらこそ失礼しました。」
名残惜し気に、航は屋代家から帰って行った。
結局、梓の名前も今何をしているのかも誰の口からも出て来なかった。
『確かに、あの日は俺の目の前にいたんだ。』
突然目の前に現れ、この手で抱きしめてキスしたはずなのに…。
今、彼女が何処でどうしているのか聞きたいけれど、
屋代家の雰囲気は航にはもう関わって欲しく無さそうだった。
あの日、離婚依頼久しぶりに会ったからか、我を忘れて抱きしめてしまった。
だが、彼女は今、実家が経営する会社で働いているのか?
慰謝料なしの離婚だったが、もし金銭的に不自由しているなら援助して構わない。
『だけど再婚して、子供がもう何人もいたりしたら…』
それなら、航が出しゃばるべきではないだろう。彼は事実が知りたかった。