クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
そして、大学で梓に出会った。
友人の竹本信也の恋人からの紹介だったが、会った瞬間に『この子だ』と
不思議な感覚で心が熱く滾ったのを覚えている。
華奢で小柄な梓は、外見に似合わず洗剤の研究がしたいと化学を専攻していた。
理系の理論派だが、穏やかな一面もあって好ましい女性だった。
最初は竹本達に付き合って4人で行動していたが、
次第に梓とは親密な関係になり、竹本達とはお互いに遠慮しあって、
それぞれにデートするようになった。
楽しい日々だった。就職が決まった頃には将来を考えるようになっていた。
竹本と川村由梨も順調に付き合いを続けており、
由梨の妊娠がわかったので卒業を待たずに彼らはゴールインした。
『何だか竹本に負けた気がして、慌てて梓にプロポーズしたんだった…。』
苦い笑いがこみ上げてくる。
勝ち負けでは無い筈なのに、あの時は必死だった。
結婚を申し込んだ時の純粋な気持ちと、梓の泣きながらも笑おうとしている顔…。
今となっては全てが懐かしい思い出だ。