クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
「昔の事さ…。」
自ら運転してマンションに帰りながら、航は何かが気になっていた。
この違和感…屋代家であった女の子か?
確か、10歳くらいだったが…健吾は『最近、結婚した』と言わなかったか?
キリっとした顔立ちの女の子だった。
初対面の自分にも挨拶してくれた、しっかりした子だった。
『まさか、梓の子か?』
だから、屋代家の家族が何か言いにくそうにしていたんだ。
そうか、彼女は再婚して子供がいたのか。
「ハハハッ。何だ…。」
…子供までいたのか。なのに、この前は勝手に欲情して人妻にキスしてしまったのか。
『とんだセクハラだ。』
バカな自分に腹が立ってきた。
『やはり、俺は女に縁が無いんだな。仕事に生きろっていう事か…。』
マンションに帰り着き、駐車場に車を置いた。
エレベーターで最上階にある自分の部屋に無言で向かう。
ふと、虚しさがこみ上げてきた。
誰もいない部屋。待ってくれる人のいない部屋。
真っ暗な部屋に一人帰るのか…。
『お帰りなさい。』
と言って迎えてくれた梓は、もう手が届かない場所にいる様だ。