クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
秋になると、来春に向けて塾の受験体制は慌しくなってきた。
2年先3年先に中学受験を考える子の親たちへの見学会も予定されている。
梓は、小・中学生の母親たちから絶大な信頼があった。
有名な大学の理系を卒業しているし、自身も子育てをしている強みがある。
子供達からも話し易いと慕われているうえ、授業コマ数が限られていた為
梓のクラスに入るのは成績上位者が中心になっていた。
その日の体験会でも、梓のクラスを見学に訪れる保護者がチラホラ見受けられた。
休憩時間には質問を受ける時もあるし、梓は気が抜けない。
「梓!」
そんな時、急に名前を呼び捨てされて振り向いた。
目の前にいたのは、学生時代の友人で当時より少しふっくらとした由梨だった。
「由梨ちゃん!」
「驚かせてゴメンね。ていうか、驚かそうと思ったんだけど…。」
学生時代と変わらず、テへへと笑っている。
「もう、来るって言ってくれたらよかったのに。」
「梓が勤めてる塾だとは知ってたけど、まさか新宿校にいるとは…。」