クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!

上背のある航にすれば、美晴くらいの子供は軽々と持ち上がるようだ。
梓は思わず、その力強い姿に見とれてしまった。

「部屋は?」

「ええっと…4階なの。重いでしょ、起こして歩かせるから。」
「構わない…。」

縦抱きにして肩で美晴の頭を支えながら、航はマンションに入って行った。
少し古いが、落ち着いたエントランスのマンションだ。

エレベーターで4階に向かっても、美晴はまだ起きない。
梓も諦めて、部屋の前に立った。航は部屋まで入るつもりのようだ。

2LDKの部屋は母子で住むには十分な広さだと思っていたが、
航が一人加わっただけで窮屈に感じる。息苦しいほどだ。

リビングの隣のドアに『美晴』と書かれた手作りのネームプレートが見えた。
航はそのドアを片手で開け、何気なく入って行った。

クリーム地に小動物の描かれたカーテンがかかる女の子らしい部屋だ。
小さな子供用サイズのベッドに美晴を下ろすと、航は改めて我が子を見た。

リビングから漏れる明かりで、その幼さが浮き彫りになる。

子供をしげしげと見た事がない航には、
生きて動いているのが不思議な程、小さく感じた。

まだ折れそうに細い手足。
呼吸する度に動く体躯も、内臓が入っているとは思えない薄さだ。

『生きている…』

我が子がこの世に生命を受けている事を、やっと実感する事が出来た。


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