クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!
美晴の部屋をぐるっと見回すと、学習机の前にコルクボードがあった。
可愛いシールやメモ、それに写真が何枚もピンで留めてあった。
赤ん坊の姿。
梓に抱かれる姿。
歩き、走り、笑い、泣き…
娘の成長が手に取るようにわかる。
写真を見続けているのが辛くなり、リビングの方を振り向くと
照明が逆光になって表情は見えないが、梓が部屋の入り口からじっと見ていた。
「今日は、これでお帰り下さい。」
「わかっている。だが、話す時間を作ってくれ。至急だ。」
「あなたも忙しいでしょうし、私も仕事があるの。直ぐには無理よ。」
「週末は?」
「仕事が終わってからでも良ければ…。」
「仕事…?グッド・クリーンか?」
「いいえ、あの塾よ。」
一瞬、航が眉を寄せた。あの頃、収入のなくなった彼を支えた梓の職場だ。
「そうか…。」
「土曜日の夜なら、何とかするわ。」
「仕事が終わったら連絡くれ。迎えに行く。」
「結構よ。あなたの会社で良かったら、私が行く。」
塾にあの車で迎えに来られたらたまらない。
「じゃあ、会社で待ってる。ガードマンには言っておくから。」
「9時半くらいに行くわ。」
「わかった。じゃあ、今週土曜日に。…待ってる。」